荒馬の現地(青森県今別町)から (2004.08.07) 
 
 

 

 

 

 

 

 

”どさ?”

”ゆさ”

日本一短い会話.

 

地吹雪舞う,津軽半島の冬の寒さは想像を絶する.

満足に口も開けない.

”どこに行くんだい?”

”お湯に行ってくるよ”
 



 

本州最果ての地

 






 

荒馬のふるさと,青森県東津軽郡今別町竜飛岬に立って,

北海道函館方面を望む.


 


津軽の各地に伝承されているねぶた(現地ではねぷた)祭り
 

この祭りもねぶたの一つであったが

後に「荒馬まつり」と改称された.


大川平荒馬まつり の ねぶた飾り


 

 

大川平文化会館
荒馬のパレードは,ここを出発し集落を一巡してここに戻る.





 

木陰でパレードの出発を待っていると,

何やってるのよ.入って入って.
ここは,誰でも歓迎だよ
遠慮しなくていいから,さ,さ,どうぞどうぞ

(津軽弁なのでよく聞き取れなかったけど,そんなカンジ?)


と,通りすがりのお母さんが会館内に招き入れてくれた.




お昼食べた?
ビール飲んで.いくらでもあるからね.
と,カレーやビールを持ってきてくれた.
 

どこから来たの?

長野と答えると

へ〜,よくまあ遠くから.

この人たち長野から来たんだってよ!

って,大声でミンナに紹介してくれた.

村の人々が,次々にビール片手に歓待してくれる.

そして,ミンナ同じ質問.夕べはどこのねぷた見てきた?

今夜はどこのねぷた見る?

わざわざ,荒馬を見に来るヤツなんているハズない.

どこかのねぷた見物のついでだろう

という意味だ.

いいえ,ホンモノの荒馬を見たくてここまで来たんです.と答えると,

良く来た.まあ飲めとビールを勧めてくれる.

 

さっきのお母さんが,ニコニコして懐から携帯電話を取り出して

車で来たんだよね.警察に連絡しとくから

って言ってゲラゲラと笑った(よく言うよ!自分で勧めておいて!)

 


 

13時.いよいよ荒馬パレードの出発.


運行の間、絶え間なく

独特のねぶた囃子が演奏される.

5尺と3尺の桶胴太鼓が竹バチで打たれ,

地鳴りとなって周囲を包み込む.

チャッパ(現地では手すり鉦)や高い音色の篠笛が



 

心に刺さる
 

 

パレードの先頭を「花もらい」が歩き,

花代を貰った家の前で,荒馬を踊る

 見物人は,観光客ではない.

まさに,そこに生活する地元の人たち.

 

 

観光客が少ないので(全部で10人いるかな?)

一目で分かるのだろう.

パレードを見ていると,地元の人が声をかけてくれて

問わず語りに説明をしてくれる.

ここの荒馬は300数十年続いている.

綱を持っているのが,手綱引きと言って女と決まっている.

若者が荒馬を踊りに都会から帰ってくる.

小学校で荒馬を教えているから,ここの子どもは全員荒馬が踊れる.

でも,町村合併で大川平小学校は廃校になってしまった.

そこで,町長にかけあって貰い受けて

資料館を作ったんだ.

 

 

荒馬を誇りに思う気持ちが,ストレートに伝わって

胸に幸せな気持ちがこみ上げて来る.

そして...

 

 

 

理由は分からないけど,涙が流れる.

 

 

 

 

 

現地の人の思いは子ども達にも受け継がれていくんだろうな.
 

 



 

 

 

おまつりってのは不思議な物だ.

見せようと思えば思うほど

形骸化してツマらなくなって行く.

 

津軽の地で出会った荒馬.
 

 

長く厳しい冬を越えた喜びと,
 


束の間の夏を楽しむ開放感

 

現地に来なければ分からなかった.

 

 

 

 

 

改めて良くみると,はかなく切ない踊りでもある.

 

また,現地で荒馬を見たい.

そして,現地の方と話してみたい.
 

青森県東津軽郡今別町大川平,そこにまつりの本質があるから.

 

ホームページに掲載するつもりで動画も撮ってきた.

でも,やめておこう.

動画では,”空気”はとても伝わりそうもない.
 





教育現場を中心に普及する荒馬

青森市のねぷたのかけ声

”ラッセ〜ラ”と結びついて

大川平の荒馬とは

道具以外,別物になっているものを見る.

まるで

伝言ゲームの様に.

 

 

素晴らしい素材を元に新しい芸能を創作する.

それは,大いに賞賛されるべき事だと思う.

 

 

だから,荒馬とは違うネーミングが出来ないものだろうか.

例えば”津軽はねと”という様な.

 

 

それが,

荒馬を伝承する現地の方への,

せめてもの礼儀であるような気がしながら,

 

 

 

 

 

 

 

長い旅を終えた.

 


Copyright (C) 2004[和太鼓 鳴桜(なを)]  All rights reserved. 更新日 : 2004/08/29